M&Aでの売却価格は、売手側企業の希望売却価格と買手側企業の希望買収価格をM&AアドバイザーやM&A仲介者などが間に入り交渉することで決まります。
売手側企業では、できるだけ高く売りたいと考え、また、買手側企業ではできれば安く買いたいと思います。こうした双方企業の思惑を、M&Aアドバイザーなどが調整しながら適当な落とし所を探りながら決めていきます。
また、売買対象の会社にも高く売れる会社と売れない企業で、各々共通した特長が見られます。
ここでは、売買対象企業のうち、高く売りやすい会社に絞り、その会社に共通する特長
や、高く売れるためになすべきことなどについて述べていきたいと思います。
M&Aで高く売れやすい会社の特長と高く売れるためになすべきこと
M&Aで高く売れやすい会社の特長について、一般的なものとしては次のようなものがあります。
事業再編・企業再編が盛んに行われている業界の会社
成熟産業で、いずれ市場が縮小していくことが予想される業界の会社では、業界大手企業にほかの会社や店舗が集約され、独占化、寡占化されていくため、好条件で売れる可能性があります。
規制緩和・法改正が行われている業界の会社
業界を規制する関連法が改正され、緩和されることで異業種からの新規参入が容易になる結果、大手の異業種企業が高い価格で買収することが考えられます。
競争優位となる経営資源を有している会社
買手側企業にとってシナジー効果を発揮し、将来継続的に企業価値を増加させてくれるような、「ヒト」、「モノ」、その他の経営資源を持っている会社は、高く売れることが期待できます。たとえば、ある特定の従業員しか持ち合わせていない技術、技能、ノウハウといったものは、その従業員とともに好条件で引き継いでもらえるといったことです。
買手側企業に必要な取引先を持っている会社
買手側企業の営業上必要な財やサービスであって、ほかの会社では供給できない取引先を持っている会社などは高く買ってもらえることがあります。
財務内容が良好な会社
直近3年から5年における財務内容がよく黒字経営の会社は、当然、M&Aにおいては高く評価されます。
また、営業上有利な機械設備といった固定資産を保有していたり、内部留保が厚いといったことも高評価となります。
信頼できる経営者である会社
売手側企業の経営者が信頼できる人物であれば、売買対象会社について、良いことも悪いことも包み隠さず開示してもらえるため、安心して買収できます。そのため、会社の評価も結果として高くなります。
そのほかにも、大都市圏のような好立地にある、営業上不要な資産がない、特定分野に集中している、粉飾決算、不正経理を行っていない、簿外債務・訴訟リスクがない、多額の借り入れがないといったことは、高く売れやすい会社に共通する特長です。
高く売れやすい会社にするためになすべきこと
次に視点を変え、高く売れやすい会社にするためにはどうしたら良いかといったことについて少々触れておきます。
明確なM&A戦略を持つこと
なぜM&Aを行うのか、経営戦略上の目的を売手側の経営者は明確にしておくことです。こうすることで、自社を必要とする買手候補企業を探すことが容易になり、マッチング(相性)の良い会社と有利に売買価格交渉を進めていくことができます。
信頼のおけるM&Aアドバイザーを選ぶこと
信頼のおけるM&Aアドバイザーや、M&A仲介者といった事業者の支援なくM&Aは行うことができません。少しでも高く売れるようにするためには、信頼できるM&Aアドバイザーなどに依頼することが重要です。
誠意ある態度で面談・交渉を行う
買手側企業との良好な関係を築き、交渉を進めていくためには、誠意ある態度で臨むことです。質問されたことに対しては真実を語り、その場でわかならいことは、M&Aアドバイザーなどに相談し、後日しっかりと解答することです。
日々の経営努力を怠らないこと
当然のことですが、日々の経営努力の積み重ねの結果が、企業価値の高評価となるためです。
M&Aで高く売れやすい会社には、共通した特長があります。こうした特長を少しでも多く持つことができるよう、常日頃の経営努力を怠らず、また、M&Aプロセスも相手側の立場を尊重しながら一つ一つ進めていくことが大切です。