M&Aの一般的なプロセスは、M&Aアドバイザーなどとの相談・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)契約→相手候補探し→トップ面談・交渉→意向表明・基本合意契約→デューデリジェンス(DD)→最終譲渡契約→クロージング(決済)といった流れで進められます。
 さらにこれらのプロセスは、大きく2つに分けられます。基本合意契約までの前半部分と、クロージング (決済)に至るまでの後半です。そして、前半のプロセスの中で最も重要なものが、売手側・買手側企業トップによる面談・交渉です。交渉というと、丁々発止の激しい議論を想像しますが、現在のM&Aでのトップ面談・交渉では、そのような過激なものはほとんどありません。そのような交渉では、売手側・買手側企業の間の信頼関係は築けず、交渉そのものがブレイクしかねません。
 そこで、売手側企業と買手側企業の間に、M&Aアドバイザーなどが入り、双方の希望を聞きながら適当な落とし所を探り「win-win」の関係になるように尽力します。特に、中小企業や小規模事業者のM&Aでは、こうした友好的な交渉がほとんどです。
 では、このような友好的トップ面談・交渉を進めていく中で注意すべきポイントは何かといったところを中心に見ていきたいと思います。

会社売却のためのトップ面談・交渉中になすべきポイントは

 今日、ビジネスの交渉で重要なものは、交渉そのもののスキルだけでなく、「関係性の重視」すなわち、双方の信頼関係の構築が重要とされています。M&Aにおけるトップ面談・交渉も同じく、売買価格や売買条件について交渉を進める中で、売手側・買手側企業双方が、相手側の立場でその思いを探り、何を重視しているのかを冷静になって理解し、自身の考えや重視する点などを擦り合わせながら妥協点を見出していくのです。
 では、M&Aのトップ面談に際し、また交渉中になすべき重要なポイントについて詳しく見ていきます。

最初のトップ面談の際になすべきこと

 具体的な交渉のスタートであるトップ面談の際になすべきことは、売手側トップ・買手側トップが相互に好印象を与えるように振る舞うことです。具体的には、指定した時間に遅れず出席すること、髪型、服装に十分に気をつけること、笑顔や言葉遣いに配慮する、好意的な態度で臨むといったものです。
 また、買手側では、自社の具体的内容を記した会社案内といったパンフレット類や、積極的なプレゼン資料の提示といったことも有効です。こうすることで、自社を詳しく知ってもらい、また、どれほど売手側企業に関心があるかといったことをアピールできるのです。一方、売手側では相手側からの質問に対しては誠意をもって答えることです。決して虚偽の内容や曖昧な内容の解答はしてはいけません。わからない場合は、後日しっかりとした内容の解答をする旨を伝え、実際に数日以内に解答することです。そのためにも、事前にM&Aアドバイザーなどとともに擦り合わせや想定問答をしておくことも大切です。

交渉中になすべきこと

 交渉を進める中で買手側企業も絞り込まれてくるため、より具体的な内容が交渉対象になります。その最も重要なものが売買価格です。通常、売手側企業ではできるだけ高い価格で売りたい、また、買手側企業では安く買いたいと思うものです。
 そこで、価格交渉に際しても事前にM&Aアドバイザーなどと協議し、希望売却価格や希望買収価格の許容範囲といったものの擦り合わせをしておく必要があります。
 また、実際に交渉を進めていく中で、特に注意して行うべきことは、交渉上の態度です。あまり身構えすぎて固くなったり、逆に気楽に行おうとそっけない態度をとってしまうと、相手に悪い印象を与えてしまいます。よくありがちなものに「売ってやる」、「買ってやる」といった横柄な態度をとる経営トップや担当者がいますが、ほとんどの場合、その時点で交渉決裂となります。やはり謙虚に、誠実な態度で、相手側企業の立場から売買価格その他の条件の提示を行うということも肝に命じておくことです。

 M&Aプロセスの中でも重要なトップ面談・交渉でなすべきことは、何といっても売手側・買手側企業双方における信頼関係の構築です。そのためには、謙虚な態度で、相手側の立場に配慮しつつ交渉を進めていくことです。その際、M&Aアドバイザーなどとの事前の協議や擦り合わせといったことも重要なものです。